小岩井農牧株式會社

 

一、沿革

 当社は昭和13年4月1日牧畜、農業および林業を主目的とし資本金200万円を以て設立せられ本店を東京丸の内に置き従来岩崎久彌男爵の所有に係る小岩井農場を買収経営するとなった。小岩井農場の名は古くから一般に知られているがこの歴史は明治24年小野義真、男爵岩崎彌之助、子爵井上勝三氏の共同創業に始まり、小岩井の名はこれら三氏の頭文字より生まれたものであって、藤波言忠子爵が初代場長となり新山荘助、赤星隆治、奥村政雄、間崎道知の諸氏を経て現戸田務氏がその任を受け受け継いでいる。初めは専ら農業の近代化を目指して米国式大農法により開墾耕作を目的としていたが明治三十二年岩崎久彌男爵がこの農場を引受け牧畜本位の方針を樹てしばしば種畜を欧州その他原産地より輸入し優良種畜の生産を主幹事業とし三菱合資会社地所部をして管理経営せしめていた。その後大正五年岩崎家庭事務所創立と共に同所所属となり次いで大正8年東山農事株式会社の委任経営に移りさらに昭和13年4月1日小岩井農牧株式会社として新発足する事となったがその本店事務は一切東山農事株式会社が代行し小岩井農場は同社の各場所に準じて取扱われる事となっている。

取締役社長 坂本正治

常務取締役 君塚慎

取締役 相川貞吉

取締役場長 戸田務

監査役 鹿島良信

監査役 岡東浩

二、事業概説 (小岩井農場)

 本農場は東北本線盛岡市から西へ三里岩手郡雫石町に在って岩手富士と言われる岩手山麓に広げられた総面積約四千町歩の集団地域である。現在は本部、育馬、育牛、耕耘、樹林の各部に分かれその職員総数25名傭員(よういん)雇員(こいん)は152名におよんでおり本部は各部の統括をなし一方農場職員子弟の為国民学校青年学校および託児所を経営しており別に農場内には郵便局もおかれている。

(イ)育馬部

繁殖種牡馬シアンモア号

繁殖種牡馬シアンモア号

小岩井農場馬の放牧状況

小岩井農場馬の放牧状況

    育牛部と共に当農場の主幹事業であってサラブレッド種を主とし、中間種を併せて毎年約二0頭余を生産し二才から三才になると競走用馬、種馬、実役馬として売却し現在種牡馬6頭蕃殖牝馬30頭を飼育しており名種牡馬シャンモア号はその産駒成績優秀なるを以て知られ、又最近輸入したプリメロ号は昨年初めてその産駒を競走場に送り優秀なる成績を収めたのである。現在三里塚御料牧場と共に斯界(しかい)の二大権威として本邦馬匹界にいささか貢献しつつある事を確信している次第である。

(ロ)育牛部

ホルスタイン種牡牛

ホルスタイン種牡牛

小岩井農場搾乳状況

小岩井農場搾乳状況

 育牛部はホルスタいンフリーシャン種の飼養蕃殖に力を入れ現在では約200頭を繋畜し毎年約50頭を生産し種牛、肉牛として逐次売却しているが、現下畜産熱の盛なるに伴い種牛、乳牛の需要が増加し全国各地の畜産組合その他より購買の申出が非常に多くなって来た。かたわら牛乳、バター、チーズ等の生産方面にも不断の努力を続け、なかんずくバターは「小岩井バター」の名を以て斯界(しかい)の最高水準を行くものである。販売先は株式会社明治屋が一手に取扱っている。

(ハ)耕耘、樹林部

小岩井農場耕耘状況

小岩井農場耕耘状況

小岩井農場緬羊放牧状況

小岩井農場緬羊放牧状況

    耕耘部では右牛馬飼料自給の目的で約八00町歩の作付反別を以て牧草、燕麦、トウモロコシ、大豆等を主作物としている。又樹林部では杉、松、檜、栗、落葉松の植林が1,300町歩で木炭の製造また相当量におよんでいる。

 なお以上の事業に付帯して養豚、養鶏、育羊などを営み一大農牧場としての完璧を期している。