2月 082013
 
 2013年2月8日

新聞記事文庫 朝鮮・台湾・満州(15-002)
台湾日日新報(新聞) 1935.8.2(昭和10)


鳳梨合同と完全なる統制

独占の弊に陥らぬよう注意


 

台湾の特産品たる鳳梨缶詰は生産の統制合理化 販売網の確立並に海外輸出の進展を目標として全島の業者を打って一丸となし去六月十六日台湾合同鳳梨株式会 社の設立を見たのである、同社に買収されたる鳳梨缶詰工場は七十八カ所にも上るも合同後は経営の合理化と原料の出回り関係を考慮し必要なる工場のみを運転 することになり其の内三十八工場を以て夏物の製造を開始した、従来は小工場濫設の弊があったし生産高に対し製造能力過剰を告げ半分も能率が出せなかった状 態で寧ろ原料不足の嫌があった様である、之で缶詰工場の合同は完了したが、まだ農場はそのままとなっている、自作農場は内外食品会社の鳳山、番路両農場と 台湾鳳梨栽培株式会社の老●農場及図南産業合資会社の斗六農場等を主なるものとし全島に十五、六カ所あり此の自作農場をも一つに合同して別に姉妹会社をつ くり軈て之を合同鳳梨会社に合併する計画であり既に二回ほど右合同に関し実行委員会を開いているが、原料生果の供給を唯だ農民其他外部からの買収のみに 頼っていては事業の安定を欠くのみならず農民を指導することによって原料並に製品の改良を図る上に於ても遺憾の点なしとは云えぬ、言い換えれば鳳梨缶詰事 業は製糖業と同じく或程度まで原料自給の必要があり各社の自作農場をも併合して始めて完全なる生産統制が出来ると云える。

抑々本島の鳳梨缶詰事業は創始以来三十余年の歴史を持っているが、著しく発達の機運に向ったのは去る大正十三、四年頃からである、当時工場設置を無制限に 許した結果即ち濫設の弊に陥り却ってその発達を阻害する結果となり工場数の増加に反し生産高はその割にふえないのみか動もすれば停頓減退せんとする状況に 立至ったので昭和二年同業組合を組織し斯業の進歩発達に資せんとしたが、財界不況の為め多数の業者は益々苦況に沈淪し最早其のまま放任出来ぬ状態になり督 府当局の指導の下に同業組合の決議により共販機関即ち台湾鳳梨缶詰共同販売株式会社を創立したのは昭和六年九月であった、併し乍ら業者の中には所謂大同一 派と称するものがあって事毎に紛争、訴訟を重ね充分共販の実が挙らず惨々苦い経験を嘗めた結果遂に最後の大合同というところに落ちついたわけである、今に して顧みれば鳳梨缶詰同業組合の組織も共同販売会社の設立も合同という堅実なる企業統制へ進む段階であったとも云えよう、尤も大合同には利点もある代りに 弊害もあるので合同鳳梨会社の事業経営に就ては経営者自身に於て深甚の注意を要するは勿論督府当局に於ても充分なる監督指導を必要とするものである。

小工場濫設の時代に於ては原料生果の買人に当たって競争せり上げの不利を招いたばかりでなく生産費の不廉と製品の不統一を免れなかった、合同後は原料の買 入値段を一定し生産費を低減し且つ製品の統一向上を期することが出来、又新販路を開拓するにも好都合であり国内販売及海外輸出の統制を図ることも一層可能 性を増した感がある、併し乍ら合同の結果原料買入値段に変動が少なくなることは好いとしても無暗に値を叩くような態度に出でんか、農民の福利を無視するこ とになり延ては原料栽培を衰退に導く所がある、大合同は専売と等しきもので動もすれば独占の弊に陥り農民や消費者に不安の念を与えるものであるから合同会 社に於ては須らく農民対策に万全の注意を払い寧ろ合同の結果が農民にも有利であるとの安心を与えるように彼等を指導すべきである。而して合同会社は原料価 格の点よりも寧ろ生産の増加、輸出の振興及副産物の発展により生産費を低減するように心掛け台湾の利益と国家経済の発展に貢献すべく努力を傾注し所謂合同 の精神に悖らよう最善の経営を期待して已まぬものである。


データ作成:2003.9 神戸大学附属図書館


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